虚名きょめい)” の例文
その大江春泥こそかく云う私なのだ。君は、私が小説家としての虚名きょめいに夢中になって、君に対する恨みを忘れてしまったとでも思うのか。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんな大家だったが、かれは方丈記の鴨長明かものちょうめいたような現世観げんせいかんを、やはり自分の生きている今にも見て、自己の虚名きょめいに、酔えなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このに及んで、そうじたばたすることは、貴方の虚名きょめいけがすばっかりですよ。神妙になさい。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それ等は自己に迎合げいごう阿附あふする者のみを愛し、これに金品を与えて虚名きょめいを博すべく努力する。
「先頃の一戦は——武門の上では、わが勝ちであったが、城地、領土の損得においては、秀吉に実利を取られておる。うかうかと、虚名きょめいに酔うて、よろこびうけてはならぬ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
始めはあの新説で世間をッと云わせて虚名きょめいを博しよう位のところだったらしいが、いよいよというときには事務室の金庫から彼が消費つかいこんだ大金おおがね穴埋あなうめに、『赤外線男』を利用したわけだった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)