薬壜くすりびん)” の例文
最初の一回だけは、彼は薬局の窓口から薬壜くすりびん薬袋くすりぶくろとを差出した。すると、美しい眼がすぐ窓口から次郎をのぞいた。そして
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
午後二人ふたりは家を出た。小山は画板を肩からわきへ掛け畳将几たたみしょうぎを片手に、薬壜くすりびんへ水を入れてハンケチで包んだのを片手に。自分はウォーズウォルス詩集をふところにして。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小指のさきで、中身をポンと落しメリメリと外箱そとばここわして裏をひっくりかえすと、弦吾はポケットから薬壜くすりびんを出し、真黄まっきな液体をポトリポトリとその上にたらした。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
スールディ夫人はその死を聞いた時、薬壜くすりびんを取り寄せて塩剤をぎ、嘆くのを忘れた。そういう場合には恋も続くものではない。汚水だめは恋の炎を消してしまう。
この方はそれで、硝子板とゼラチンとほか薬壜くすりびんが四、五本並べば、もう仕事が始められたのである。
僕等はそんなことを話しながら、幾つかの硝子窓をのぞいて歩いた。窓かけはどれも厳重に「悠々荘」の内部を隠していた。が、ちょうど南に向いた硝子窓のかまちの上には薬壜くすりびんが二本並んでいた。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「なんだか、薬壜くすりびんのようだネ」万事ばんじ了解りょうかいしたらしい様子の帆村が、低声こごえで云った。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
薬の時間でもないのに、ひょいと薬壜くすりびんをとり上げ、その目盛をすかして見たり、栓をぬいてみたりした。また、ぽかんとして庭を見つめていて、急に気がついたように母の顔をのぞいたりした。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ボラギノールの薬壜くすりびんは?」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)