わらび)” の例文
辰男の明け方の夢には、わらびえる學校裏の山が現れて、其處には可愛らしい山家乙女やまがをとめが眞白な手を露出むきだして草を刈りなどしてゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
白樺の性根の失せてもろい枝や、柔嫩じゅうなんな手で人のすねを撫でる、湿ったわらびや、苔や、古い落葉の泉なす液汁や、ジメジメする草花の絨氈じゅうたんやそんなものが、むちゃくちゃに掻き廻されて、緑の香が強い
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
壮烈なるは匕首ひしゅふところにして不測のしんに入り、頑固なるは首陽山のわらびに余命をつなぎ、世を茶にしたるは竹林にひげひねり、図太づぶときは南禅寺の山門に昼寝して王法をおそれず、一々数へ来れば日も亦足らず
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)