蔵人所くろうどどころ)” の例文
やがて国司を経て朝廷に奏し、かの郡司の子孫今にその業を伝えて犬頭という絶好の糸を蔵人所くろうどどころに納めて、天皇の御服に織ると見ゆ。
置き物の台、き物、吹き物の楽器は蔵人所くろうどどころから給せられたのである。右大将の勢力も強大になっていたため今日の式のはなやかさはすぐれたものに思われた。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
綾麻呂 巧みなる贈賄ぞうわい行為で人々を手馴てなずけ、無実の中傷で蔵人所くろうどどころの官を奪い、あまつさえその復讐ふくしゅうをおそれて、臣、石ノ上を東国のはてに追いやった我等が仇敵は?
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
兄の貞盛は、もうとくに、勧学院を卒業して、御所の蔵人所くろうどどころに、勤めている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女が一条天皇の中宮定子ちゅうぐうていしの侍女として、この若き中宮の寵愛ちょうあいを一身に集めていたころ、宮内の私事を司どる蔵人所くろうどどころの長官としては、藤原行成ふじわらのゆきなり頭弁とうのべん)、藤原斉信ただのぶ(頭中将)などがあった。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
池の魚を載せた台を左近少将が持ち、蔵人所くろうどどころ鷹飼たかがいが北野で狩猟してきた一つがいの鳥を右近少将がささげて、寝殿の東のほうから南の庭へ出て、階段きざはしの左右にひざをついて献上の趣を奏上した。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と返歌を奏上してから大臣は、清涼殿せいりょうでんの正面の階段きざはしを下がって拝礼をした。左馬寮さまりょうの御馬と蔵人所くろうどどころたかをその時に賜わった。そのあとで諸員が階前に出て、官等に従ってそれぞれの下賜品を得た。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)