ほうぶ)” の例文
自分は閑静な車輛しゃりょうのなかで、先年英国のエドワード帝をほうぶった時、五千人の卒倒者をいだした事などを思い出したりした。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とにかくこう云う訳で自分はいよいよとなって出奔しゅっぽんしたんだから、もとより生きながらほうぶられる覚悟でもあり、またみずから葬ってしまう了簡りょうけんでもあったが
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
シキへほうり込まれるには若過ぎるよ。ここは人間のくずが抛り込まれる所だ。全く人間の墓所はかしょだ。生きてほうぶられる所だ。一度んだが最後、どんな立派な人間でも、出られっこのない陥穽おとしあなだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
手足は自由に働いて、められたような窮屈も覚えない上に、人目にかからん徳は十分ある。生きながらほうぶられると云うのは全くこの事である。それが、その時の自分には唯一の理想であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)