落葉松林からまつばやし)” の例文
そこへると最早もはや寒帶林かんたいりんをはりにちかづいたことがわかります。すなはち落葉松林からまつばやしはゞはごくせまくなつてをり、ちひさくなつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それから寒帯の地方と気候を同じくするという軽井沢附近の落葉松林からまつばやしに俗に「ナゴ」と称えるものが氷の花のように附着するさまを想像してみたまえ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私の好んで行った山よりの落葉松林からまつばやしは、ときおり林の切れ目から薄赤い穂を出したすすきの向うに浅間の鮮な山肌をのぞかせながら、何処までも真直に続いていた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
前に、富嶽を仰ぎ、うしろに湖を見る落葉松林からまつばやしの中にすべて新しい木口の宿殿が建てられてあった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落葉松林からまつばやしを思つてた。
(新字旧仮名) / 新美南吉(著)
私の好んで行った山よりの落葉松林からまつばやしは、ときおり林の切れ目から薄赤い穂を出したすすきの向うに浅間の鮮やかな山肌をのぞかせながら、何処どこまでも真直に続いていた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
八ヶ岳の山麓さんろく一帯に拡がっている落葉松林からまつばやしへりを、もうそろそろ病人がもじもじしながら自分の帰りを待っているだろうと考えながら、心もち足を早めてサナトリウムに戻るのだった。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
小さな落葉松林からまつばやしを背負いながら、夕日なんぞにかがやいている木の十字架が、町の方からその水車の道へはいりかけると、すぐ、五六軒の、ごみごみした、薄汚ない民家の間から見えてくるのも
木の十字架 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
途中の落葉松林からまつばやしのはずれまでお見送りして、其処から一人で帰ってきながら、私はこの村にこうして一人で気儘きままにいられるのを幸福に思わなければならないのかな、と考えたが、それにはいささか
雉子日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)