落花狼藉らっかろうぜき)” の例文
現場の落花狼藉らっかろうぜきは、ここに記すに忍びない。その代り検視の係官が、電話口で本庁へ報告をしているのを、横から聴いていよう。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆかは暖炉だんろぬくまりにて解けたる、靴の雪にぬれたれば、あたりの人々、かれ笑ひ、これののしるひまに、落花狼藉らっかろうぜき、なごりなく泥土にゆだねたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
下っ引の持っていた御用の提灯が二つ、窓から人間と一緒に飛込むと、中はまさに落花狼藉らっかろうぜきの有様です。
と正三君はあやまりながらきおこした。照彦てるひこ様は刺繍台ししゅうだいをつぶしたことに気がつくと、正三君を突きのけて逃げていった。ご丹精たんせい芙蓉ふよう落花狼藉らっかろうぜきになっている。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ツルリと足をとられて倒れた弥生へ、半狂乱の豆太郎がけもののごとく躍りかかって——落花狼藉らっかろうぜき……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その痛さ加減というものは実に全身にみ渡ったです。そうすると娘が泣き出す。女房が泣き出す。一人の男がそれを押えるという始末で実に落花狼藉らっかろうぜきという有様に立ち至った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
舞台の方では見物席の落花狼藉らっかろうぜきをそ知らぬ風で、何人目かの太夫がゆかへ上っていた。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこで膳部もふすまも壁もあったものではない落花狼藉らっかろうぜき
(新字新仮名) / 海野十三(著)