萩原はぎわら)” の例文
大菩薩峠だいぼさつとうげは江戸を西にる三十里、甲州裏街道が甲斐国かいのくに東山梨郡萩原はぎわら村に入って、その最も高く最もけわしきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。
また誰に向っても、「萩原はぎわらの武太郎は、五宿へ往って女郎買じょろうかいばかしするやくざもので」と其亭主の事を訴える。武太さんは村で折紙おりがみつきのヤクザ者である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
下呂から先は歩行も困難でなく、萩原はぎわら小坂おさかを経て、宮峠にかかると、その山麓さんろくに水無神社を望むこともできる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それはおつゆと云う女に関係した浪人の萩原はぎわら新三郎の名が、荻原新之丞をもじったものであるにみても判ろう。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わざわざ京都から萩原はぎわらなにがしという神道家を招いて、神道の研究にもふかく心を入れていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ、ほんに、萩原はぎわらさんね、そらわたしたちより一年さきに卒業した——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さとの常盤ときわ家には父母と兄や姉たちがいる。わたくしは常盤家の末娘として育って来たが、実の子ではなかった。本当の父は杉守あずさといい、萩原はぎわら宗固派の国学をまなんで、藩校の教官をしていた。
やぶからし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飛騨ひだ萩原はぎわらの町の諏訪すわ神社では、又こういう伝説もあります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「さて、明日は大和へ入って萩原はぎわらへ泊る、それから宇陀うだの松山へ出ようか、初瀬はつせへかかろうか」