“莫（ナカ）” の例文
「お動きなさいますな。じっとしていましょう。それしかありません。疎石禅師が仰っしゃいました。妄想（モウソウ）スル莫（ナカ）レ……って」
私本太平記：02 婆娑羅帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
盲（めしい）を連れてのそんな足掻（あが）きは、しょせん無謀とも迷わざるをえない。——妄想スル莫（ナカ）レ、妄想スル莫レ……と胸でいってみる。でも、それはどうしていたらいいことなのか。
私本太平記：02 婆娑羅帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
覚一は、妄想スル莫（ナカ）レを念じ、尼の唇は自然に、“地蔵菩薩本願経”を糸のような小声で唱（とな）えていた。——いつか外に、チチチチと、小鳥が明けを告げていたのも耳になく。
私本太平記：02 婆娑羅帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
ははあ、文盲（もんもう）とみえるな。読んで聞かせる。その裏面（うら）を返してみい。——楮幣（チヨヘイ）ハ銅幣『乾坤通宝（ケンコンツウホウ）』ト同ジク併（アハ）セ用ヒ、一切ノ交易ニ滞（トドコホ）リアル莫（ナカ）レ——としてあるのだ。よくおぼえておけ。
私本太平記：09 建武らくがき帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
天（テン）勾践（コウセン）ヲ空シウスル莫（ナカ）レ
私本太平記：11 筑紫帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
誤（アヤマ）ル莫（ナカ）ラン
私本太平記：08 新田帖 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)