草原くさばら)” の例文
舞鶴城の天守のやぐらで、うまの刻……只今の正午のお太鼓がド——ンと聞えますと、すぐに鍬を放り出して、近くのどて草原くさばらの木蔭か軒下のきしたに行って弁当を使う。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と思わずつまを取りまして、其処そこに有合せた庭草履を穿いての生垣の処へ出て見ると、十間ばかり先の草原くさばらに立って居りまして、頻りと招く様子ゆえお竹は
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
町はずれの怪しげな饂飩うどん屋に入って、登山の支度をし、秩父街道をすこしいって、上影森村の辺から左へ間道を抜けると、いよいよ山麓の樹立途こだちみちは爪先上りとなり、色の好い撫子なでしこの咲いている草原くさばらの中に
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
……のみならず、その当の目標の曲馬団は間もなく、今日まで見世物の興行などを一度も許された事のない丸の内の草原くさばらの中に大きな天幕テント張の設備を初めた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大いによろしい。気に入ったぞ。それでは一つ吾輩の正体を明らかにして全世界三十億の蛆虫うじむし共をパンクさせてくれるかな。とにかく向うの草原くさばらへ行こう。あの大きな土管の中で話そう。イヤイヤ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)