茅渟ちぬ)” の例文
たとへば、淡路あはぢ和泉いづみあひだうみは、古來こらい茅渟ちぬうみせうたつたのを、今日こんにちはこの名稱めいせうばないで和泉洋いづみなだまたは大阪灣おほさかわんせうしてゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私はこの話のおしまひに私の生れたさかひと云ふ街を書いて置きたく思ひます。堺は云ふまでもなく茅渟ちぬの海に面した和泉国いづみのくにの一小都市です。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
海抜三千尺という山の上から望む茅渟ちぬの海は、遠く視野のはて、紀淡海峡きたんかいきょうを去来する汽船の煙が長く尾を引いて、行方も知れず空に消えてゆく。
六甲山上の夏 (新字新仮名) / 九条武子(著)
ある人の言葉に、ほととぎすはいて天主台のほとりを過ぎ、五月さつきの風は茅渟ちぬ浦端うらわにとどまる征衣を吹いて、兵気も三伏さんぷくの暑さにみはてた、とある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
杉のうへに茅渟ちぬの海見るかつらぎや高間たかまの山に朝立ちぬ我れ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
茅渟ちぬの みづ
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)