花骨牌はながるた)” の例文
店の左手ゆんでに飾った硝子戸がらすどの本箱に附着くッつけて、正面から見えるよう、雑誌、新版、絵草紙、花骨牌はながるたなどを取交ぜてならべた壇の蔭に、ただ一人居たお夏は
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名物切といふと、何処の秘蔵でも花骨牌はながるたの札か、精々大きくて慈善音楽会の招待切符せうだいきつぷ位のもので、加賀侯の名物切も観山氏の頭では無論そんなものだつた。
その頃僕の友人達の間に、花骨牌はながるたが可なり流行っていて、僕も時々仲間に引張り込まれたものです。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
事の起因おこりあんずるに、去年秋雨の降くらす、奥の座敷に、女ばかり総勢九人、しかも二組になって御法度の花骨牌はながるた。軒の玉水しとしとと鳴る時、格子戸がらり。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さいの目に切った紙片かみきれを、膝にも敷物にもぱらぱらと夜風に散らして、しまの筒袖凜々りりしいのをと張って、菜切庖丁に金剛砂こんごうしゃ花骨牌はながるたほどな砥を当てながら、余り仰向いては人を見ぬ
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)