花筒はなづつ)” の例文
墓標は動かず、物いわねど、花筒はなづつの草葉にそよぐ夕風の声、いなとわが耳にささやくように聞ゆ。これあるいは父の声にあらずや。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つめた石塔せきとうに手を載せたり、湿臭しめりくさ塔婆とうばつかんだり、花筒はなづつ腐水くされみずに星の映るのをのぞいたり、漫歩そぞろあるきをして居たが、やぶが近く、ひどいから、座敷の蚊帳が懐しくなって、内へ入ろうと思ったので
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枕許まくらもとの花瓶に生けて、壁や柱の花筒はなづつして
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
今度行ってみると、佐々木の墓も大野の墓ももとのままで、大野の墓の花筒はなづつには白い躑躅が生けてあった。かの若い僧が供えたのではあるまいか。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つめた石塔せきたふせたり、濕臭しめりくさ塔婆たふばつかんだり、花筒はなづつ腐水くされみづほしうつるのをのぞいたり、漫歩そゞろあるきをしてたが、やぶちかく、ひどいから、座敷ざしき蚊帳かやなつかしくなつて、うちはひらうとおもつたので
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)