艶消つやけし)” の例文
艶消つやけしの金属で、うつろな椀の形をしたボタンみたいなもので、表面にR・K・BROS・CO・という文字が浮彫りになっていた。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
植木鉢うゑきばち草花くさばな花束はなたば植木棚うゑきだな、そのしづかに流れるは、艶消つやけしきんの光をうつしつつ、入日いりひうんを悲んで、西へともなふセエヌかは、紫色の波長く恨をひいてこの流
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
百姓弥之助ひゃくしょうやのすけは、武蔵野の中に立っている三階艶消つやけしガラスの窓を開いて、ずっと外を見まわした。いつも見飽みあきている景色だが、きょうはまた馬鹿に美しいと思った。
ここで出来るもので水甕や蓋附壺によい品がありますが、甕で「利休りきゅう」と呼んでいる黄色い釉薬うわぐすりのがあります。この色は特別に美しくやや艶消つやけしの渋い調子であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
うとうとしていた章一は、片頬かたほおあたたか緊縛きんばくを覚えたのでふと眼を開けた。艶消つやけし電燈のやわらかなあかりは、黒いねっとりとうるみを持った二つの瞳とほてった唇をそこに見せていた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)