臘月ろうげつ)” の例文
するうちに季節は早くも臘月ろうげつ(十二月)のはじめ。この山東地方では月々八日の臘日ろうじつには先祖の墓掃ぼそうまいりをする風習がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折ふし延宝二年臘月ろうげつ朔日ついたちの雪、繽紛ひんぷんとして六美女の名にちなむが如く、長汀曲浦ちょうていきょくほ五里に亘る行路の絶勝は、須臾たちまちにして長聯ちょうれん銀屏ぎんぺいと化して、虹汀が彩管さいかんまがふかと疑はる。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたくしは戦後人心の赴くところを観るにつけ、たまたま田舎の路傍に残された断碑を見て、その行末を思い、ここにこれをしるした。時維ときにこれ昭和廿二年歳次丁亥ていがい臘月ろうげつの某日である。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
揺り覚まされた虻が茫漠ぼうばくとした堯の過去へ飛び去った。そのうららかな臘月ろうげつの午前へ。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
最近私の見た東北大学の図書館にある一本のごときは、書名を『鬼三太残齢記きさんたざんれいき』と称し、序文に歳は重光大康落にある臘月ろうげつ十日とあって、仙台の城下で人の話を筆記したといっている。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
庚寅かのえとら臘月ろうげつ。もう八ツ寝るとお正月といふ日
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
延慶元年臘月ろうげつ、七十四を以て示寂じじゃく
南浦紹明墨蹟 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)