腹立紛はらたちまぎ)” の例文
将門は腹立紛はらたちまぎれに乱暴して帰つたから、今度は常陸方から解文げぶんを上して将門を訴へた。で、将門の方へ官符が来て召問はるべきことになつたのだ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
市郎はあッと顔を押えながら、腹立紛はらたちまぎれの殆ど無意識に、お杉の胸のあたりを強く突くと、彼女かれは屏風倒しに撲地はたと倒れた。袋の山毛欅は四方に散乱した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かさぬのみか種々さま/″\の惡口雜言ざふごんを云れ腹立紛はらたちまぎれにのゝしり散し愛想盡あいそづかして立出しが外に便るべき先なければ如何はせんと思案しあんしながら歸る道にてにはか胸騷むなさわするゆゑ不※ふと心付是迄遂に夜に入て家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わし腹立紛はらたちまぎれじゃ、無暗むやみと急いで、それからどんどん山のすそ田圃道たんぼみちへかかる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、腹立紛はらたちまぎれに人を殺したものの、わが眼前めのまえよこたわれる熊吉の屍体を見ては、彼もにわかに怖しくなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
腹立紛はらたちまぎれに箒を取直とりなおして、お葉の弱腰をはたぐと、女は堪らず又倒れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)