背水はいすい)” の例文
そして、都田川を背水はいすいにしいて、やや、半刻はんときあまりの苦戦をつづけていると、フイに、思いがけぬ方角ほうがくから、ワーッという乱声らんせいがあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何もかも素直に投げだして、背水はいすいじんいたらしく見える彼女を思うと、渡瀬はふと奇怪な涙ぐましさをさえ感じた。渡瀬はもとよりおぬいさんを憎んでいるのではない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「楠木の小細工など、公綱になんするものぞ。臆病者は知らず、勇者には、大河も背水はいすいノ陣になる」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ、大敵に向う戦の始めなら、舟橋などは焼いて、背水はいすいの陣をくという兵略もあるが、敗戦して落ちてゆく今、敵にもやすやすけ得られるものをこわして行っても益はない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう背水はいすいじんを以て催促されているので、奉行ぶぎょうたる長秀は、信長が屡〻しばしば見まわりに来るごとに、その扈従こじゅうと案内に立っている暇も、実は、迷惑なほど、時間が惜しまれていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背水はいすいの陣にたおれるよりほかない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵、背水はいすいの陣をく!
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)