肥後守ひごのかみ)” の例文
嫡子ちゃくし六丸は六年前に元服して将軍家からみつの字を賜わり、光貞みつさだと名のって、従四位下侍従じじゅう肥後守ひごのかみにせられている。今年十七歳である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兵さんは低くうなると、サッと右手を前へ突きだした。次郎はワッと言って尻餅をついた。兵さんの手には、三四寸の肥後守ひごのかみ小刀ナイフが握られてあった。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
言ひ伝へによると、侘助椿は加藤肥後守ひごのかみが朝鮮から持ち帰つて、大阪城内に移し植ゑたものださうだ。
侘助椿 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
彦根ひこねよりする井伊掃部頭かもんのかみ、名古屋よりする成瀬隼人之正なるせはやとのしょう、江戸よりする長崎奉行水野筑後守ちくごのかみ、老中間部下総守まなべしもうさのかみ、林大学頭だいがくのかみ、監察岩瀬肥後守ひごのかみから、水戸の武田耕雲斎たけだこううんさい
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにつけても肥後守ひごのかみは、——会津中将は、あおい御一門切っての天晴あっぱれな公達きんだちのう! 御三家ですらもが薩長の鼻息うかごうて、江戸追討軍の御先棒となるきのう今日じゃ。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
友木には短刀は愚か、肥後守ひごのかみのような簡単な小刀さえなかった。そんなものを買う金は無論ない。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「ハッハヽヽ。しかしこれでも肥後守ひごのかみぐらいの切れ味はあるかも知れないよ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)