肘枕ひじまくら)” の例文
今まで、尺八を構えた姿勢で坐って聞いていた竜之助が、ごろりと横になって、肘枕ひじまくらにあちらを向いたのはその時のことです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
枡平ではおみのが給仕にあらわれ、十太夫としきりにやりあったが、土田は聞くだけで話には加わらず、しまいには肘枕ひじまくらで横になってしまった。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
近頃だんだん昔のような溌剌はつらつさがなくなり、ややともすると所構わず足を投げ出したり、肘枕ひじまくらをしたり、溜息ためいきをついたり、持ち前の行儀悪さが一層ひどくなったのは
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
墨染めの法衣の胸をはだけ、ムシャムシャした胸毛を露出させ、肘枕ひじまくらをした大坊主が、陣幕の裾に眠っていた。早足と大力とで有名な、正雪のお気に入りの門下である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
肘枕ひじまくらをして読んでいると、窓の外からお前さんの見当違い……まったく妙な所で会いましたねえ
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女中たちの蔭であやし気勢けはいのするのが思い取られるまで、腕組が、肘枕ひじまくらで、やがて夜具を引被ひっかぶってまで且つ思い、且つ悩み、幾度いくたび逡巡しゅんじゅんした最後に、旅館をふらふらとなって
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに置かれてある一基の燭台の橙黄色だいだいいろの燈火に照らされ、端坐をしたり、肘枕ひじまくらをしたり、横になったり、胡坐あぐらをかいたりして、武士にあるまじい自堕落な態度で、緑色の衣裳を一様に着た
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)