肌触はだざわ)” の例文
京は冬でも風がなくって静かなせいか夜気の肌触はだざわりは身を切るように冷たくっても、ほの白く露霜を置いた、しっとりとした夜であった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
幸子は自分の住んでいる蘆屋あたりの空の色や土の色の朗かさ、空気の肌触はだざわりの和やかさを想い浮かべた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夏の夜更よふけの、外は露気を含んで冷や冷やと好い肌触はだざわりだけれど部屋の中は締め込んでいるのでむうっと寝臭い蚊帳かやの臭いに混ってお前臭いにおいが
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
磊落らいらくで、話上手で、肌触はだざわりのよいところを発揮したが、酒はこの前よりも多量に飲み、食後も盛んにウィスキーのグラスを傾けつつ諧謔かいぎゃくろうしてむことを知らないので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今朝来の風の肌触はだざわり東京はもうすっかり秋ですがそちらは如何いかがですか、何卒なにとぞ御身御大切に
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
街のの色は夜ごと夜ごとに明麗になってきて、まして瀟洒しょうしゃとした廓町くるわまちよいなどを歩いていると、暑くも寒くもない快適な夜気の肌触はだざわりは、そぞろに人の心をそそって、ちょうど近松の中の
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それにしてもあのざわざわした、ほこりっぽい、白ッちゃけた東京と云う所は何と云ういやな都会であろう。東京と此方とでは風の肌触はだざわりからして違うと、雪子が口癖のように云うのも尤もである。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
風の肌触はだざわりが冷え冷えとして、いかにももう秋だと云う感が深い。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
第一空気の肌触はだざわりが、こない柔かいことあれへん。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)