群巒ぐんらん)” の例文
永味岳、黒田岳、所謂いはゆる八重岳の群巒ぐんらんをなし、垂直的肢節の変化に富む。海抜一○○○から一五○○米の山腹に屋久杉の繁茂。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
桔梗ききょう色に光を帯びて輝く美しさ、その下に群巒ぐんらんの頂が浮んで見える、——しかしこの美観も瞬時に消えて、雲一帯、たちまちに覆うてしまう。風はなかなかに烈しい。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
白根山塊の東に横たわる群巒ぐんらんは、上毛三山の一に数えられている榛名火山である。中央火口丘の榛名富士は榛名湖の東に聳立して、其前面(南)は平な高原をなしている。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そこからはるかに見渡すと、ばくとした雲の海に加賀の白山はくさん群巒ぐんらんをぬいて望まれる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山道を登りていたゞきに至りし時、我は早く地平線上一帶の銀色を認め得たり。是れハドリア海なり。脚下に大波の層疊せるを見るは、群巒ぐんらんの起伏せるなり。既にして碧波の上に、檣竿しやうかんの林立せるを辨ず。
あれ程綺麗でそして雄勁ゆうけいな山の膚や輪廓を見たことがない。野辺山原から雪の晴れた朝、眉を圧して聳え立つ八ヶ岳の群巒ぐんらんを額越しに見上げて、其瑰麗かいれいな姿に満足しない者があるだろうか。
冬の山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
群巒ぐんらん重々として幾多起伏している上を圧して、雪色のまだらな乗鞍の連峰が長くわたっている。初秋の空らしい、細い雲がその頂の上を斜めに幾条も走っている。如何にも悠然とした山の姿だ。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)