羅曼ロマン)” の例文
今日の支那の最大の悲劇は、無数の国家的羅曼ロマン主義者即ち「若き支那」の為に鉄の如き訓練を与へるに足る一人のムツソリニもゐないことである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
盗まれた仏像も「来年八月には屹度きっと出る」などと喝破しているところ、いかにも神秘的な存在で羅曼ロマン的な興味が深い。
先生此逆境に立ちて、隻手羅曼ロマン主義の頽瀾たいらんを支へ、孤節こせつ紅葉こうえふ山人の衣鉢を守る。轗軻かんか不遇の情、独往大歩の意、ともに相見するにへたりと言ふ可し。
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「落葉いて葉守はもりの神を見しかな」。鏡花きやうくわの小説など読みゐたれば、その羅曼ロマン主義を学びたるなるべし。
わが俳諧修業 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
本阿弥ほんあみ折紙をりかみ古今ここんに変ず。羅曼ロマン派起つてシエクスピイアの名、四海に轟く事迅雷じんらいの如く、羅曼派亡んでユウゴオの作、八方にすたるる事霜葉さうえふに似たり。茫々たる流転るてんさう。目前は泡沫、身後しんごは夢幻。
我等亦多言するをもちひずといえども、其の明治大正の文芸に羅曼ロマン主義の大道を打開し、えん巫山ふざんの雨意よりも濃に、壮は易水の風色よりも烈なる鏡花世界を現出したるはただに一代の壮挙たるのみならず
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)