纏頭はな)” の例文
お祖母さんは奥勤め中たまさかの休みに芝居見物に行き贔屓ひいきのこども役者を芝居茶屋へ聘んで纏頭はなをとらせるのを楽みにしたという話だから
美少年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ちょっと手土産てみやげがわりという纏頭はなでも、百両千両はきれいにおきになるお大尽。おっかさん、どうでしょう?
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るにここに、この名優式の鼻の表現法を堂々と実世間で御披露に及んで、名優以上の木戸銭や纏頭はなを取っているものがザラにいるのには驚かされるのであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
文字を識って俳諧の心得などのあるものは、わずかに二三人に過ぎない。香以は浜の砂地に土俵を作らせ、村の子供を集めて相撲を取らせて、勝ったものには天保銭一枚の纏頭はなを遣りなどした。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
加賀金沢百万石の大名、前田侯などお通りの節には、行列蜿蜒数里に渡り、その後供など霞むほどであったが、この追分には必ず泊まり、泊まれば宿中の遊女という遊女は召されて纏頭はなをいただいた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「戀」の供奉ぐぶにかづけの纏頭はなと贈らむも、よし遮莫さもあらばあれ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
幇間の纏頭はなや俳句の選者料ぐらいはタカが知れている。わたしは書画骨董の鑑定を学んで、それ等の仲介のコンミッションを取ったり、自分でも売買する方面へ職業を転出して行った。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「恋」の供奉ぐぶにかづけの纏頭はなと贈らむも、よし遮莫さもあらばあれ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)