縫箔ぬいはく)” の例文
おまえはフランネルの服とあさの服と、レースのボンネットに、白い毛糸のくつ下と、それから白い縫箔ぬいはくのあるカシミアの外とうを着ていた。
彫刻、彩色、縫箔ぬいはく、挿花、盆栽、庭作り、建築等、みな美術なり。詩文、和歌、謡曲、義太夫ぎだゆう、発句、俳諧はいかいも美術なり。わが国にありては、茶の湯、習字に至るまで美術に属す。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
萌黄もえぎや、金銀の縫箔ぬいはく光を放って、板戸も松の絵の影に、雲白くこずえめぐ松林しょうりんに日のす中に、一列に並居なみいる時、巫子みこするすると立出たちいでて、美女のおもていち人ごとに、式の白粉を施し、紅をさし
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『昔々物語』によれば、昔は普通の女が縫箔ぬいはく小袖こそでを着るに対して、遊女が縞物を着たという。天明てんめいに至って武家ぶけに縞物着用が公許されている。そうして、文化文政ぶんかぶんせいの遊士通客は縞縮緬しまちりめんを最も好んだ。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
白いフランネルの上着にたいそうしなやかなあさの服を重ね、白いきぬでふちを取って、美しい白の縫箔ぬいはくをしたカシミアの外とうを着ていました。
「でもどうして旅商人たびあきんど風情ふぜいが、その子どもにレースのボンネットや、縫箔ぬいはくの外とうを着せるだけの金があったろう。旅商人たびあきんどというものは、そんなに金のあるものではないさ」