締直しめなお)” の例文
彼はおのれの責任を忘れて、きょろきょろと四辺あたりを見廻したのちに、解きかけていた帯をそこそこに締直しめなおして、枕橋の方へ曲って往った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜の更けぬちっとも早く帰った方が怜悧りこうだと、お葉はびんの雪を払いつつ、ゆるんだ帯を締直しめなおしてった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(そは作者の知る処にあらず。)とにかく珍々先生は食事の膳につく前には必ず衣紋えもんを正し角帯かくおびのゆるみを締直しめなおし、縁側えんがわに出て手を清めてから、折々窮屈そうに膝を崩す事はあっても
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「今話したじゃねえか。日魯にちろの大戦争よ。満洲まんしゅうじゃねえか。」と言って、爺さんは禿頭はげあたまから滑り落ちそうになる鉢巻の手拭を締直しめなおしたが、「ええと。何年前だったろう。おれももう意久地いくじがねえや。」
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)