締括しめくく)” の例文
中味は込入っていて眼がちらちらするだけだからせめて締括しめくくった総勘定そうかんじょうだけ知りたいと云うなら、まだ穏当な点もあるが
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
論じ東京人の贅沢ぜいたくには裏も表もないけれども大阪人はいかに派手好きのように見えても必ず人の気の付かぬ所で冗費じょうひを節し締括しめくくりを附けていることを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
で、その両端は房の付いて居る赤色あるいは緑色の絹打紐きぬうちひもくくり、その紐とのつなぎ合せには真珠の紐を七つばかり連ねた根掛ねがけのような紐を用いて両端の締括しめくくりにしてあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もっとも主人の総七は女房のお信が死んでからは、稼業の事などは一向身に染まなかったようで、死んでしまったところで、店の締括しめくくりに何の不自由もあるわけはなかったのです。
一種の締括しめくくりある二字か三字の記号を本来の区別と心得て満足する連中に安慰を与えている。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
違棚ちがいだなせまい上に、偉大な頭陀袋ずだぶくろえて、締括しめくくりのないひもをだらだらとものうくも垂らしたかたわらに、錬歯粉ねりはみがき白楊子しろようじが御早うと挨拶あいさつしている。立て切った障子しょうじ硝子ガラスを通して白い雨の糸が細長く光る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな妙な商売は近頃とんと無くなりましたが、締括しめくくった総体の高から云えば、どうも今日の方が職業というものはよほど多いだろうと思う。単に職業に変化があるばかりでなく、細かくなっている。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)