緋桜ひざくら)” の例文
鎌倉時代から室町の頃にかけては、前期の女性を緋桜ひざくら、または藤の花にたとうれば、梅のかんばしさと、山桜の、無情を観じた風情ふぜいを見出すことが出来る。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
……雪の下を流るる血は、人知らぬかがりに燃ゆる。たとえば白魚に緋桜ひざくらのこぼるるごとく。——
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとたび、花和尚がこううなると、たちまちその満面も、背の文身ほりもの緋桜ひざくらのようになる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうですか、アハハハハ。荒川あらかわには緋桜ひざくらと云うのがあるが、浅葱桜あさぎざくらは珍らしい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
緋桜ひざくら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さそくのたしなみで前褄まえづまを踏みぐくめた雪なす爪先つまさきが、死んだ蝶のように落ちかかって、帯の糸錦いとにしき薬玉くすだまひるがえると、こぼれた襦袢じゅばん緋桜ひざくらの、こまかうろこのごとく流れるのが、さながら、凄艶せいえん白蛇はくじゃの化身の
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)