終夜よすがら)” の例文
其の林や木立は、冬の暴風雨あらしの夜、終夜よすがらうなり通し悲鳴を擧げ通して其の死滅の影となツたのだ……雖然けれども鬪は終ツた。永劫えいごふの力は、これから勢力を囘復するばかりだ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
兄さんはまた、父は非常に興奮こうふんして、終夜よすがら酒を飲み明かし、母や私に出て行けと申しますと云った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それで彼は北山殿でも花の終夜よすがら、君に宿直とのいしたことなども思い出して、あす知れぬ戦陣の身、これがお名残りになろうもしれずと、独り今夜をここになつかしんでいたのであった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林の貫きて真直ますぐに通う路あり、車もようよう通いるほどなれば左右のこずえは梢と交わり、夏はの葉をもるる日影鮮やかに落ちて人の肩にゆらぎ、冬は落ち葉深く積みて風吹く終夜よすがら物のささやく音す。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)