純乎じゅんこ)” の例文
十三日には目名めなという村の獅子舞が来て家々をまわった。熊野のお札と御幣とを中に立てて山伏が演ずる純乎じゅんこたる祈祷の式であった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
故に忠君愛国の文字は哲学流に解すれば純乎じゅんこたる人類の私情しじょうなれども、今日までの世界の事情においてはこれを称して美徳といわざるを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
前のよりはいっそう人のよかりそうな、純乎じゅんこたる素人が、ワナを眼の前につきつけられて、まんざらでもない心持。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……お前を悔悟せしめたその純乎じゅんこたる大和民族の血をもって、今後、国家のために報恩的の奉仕をせよ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かくまでに膨脹したるものを、何故なにゆえに鎖国令の下に圧窄あっさくしたるぞ。当時の大勢むべからざるものあればなり。けだし当時の宗教なるものは、不幸にして純乎じゅんこたる宗教にあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
またたとい未来において英文の科が設けられるにしても、共に入学した五十四人の過半は純乎じゅんこたる漢学諸生だから、スペルリングや第一リイダアから始められなくてはならない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここまで来て、気がついて見ると、客観、主観両方面の文学には妙な差違がこもっております。純乎じゅんことして真のみをあとづけようとする文学にっては、人間の自由意思を否定しております。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そもそもこの諸君子は純乎じゅんこたる急進自由の率先者なればその政治上の意見・議論・運動・行為は徹上徹下てつじょうてつげ、ただ自由主義と相始終するこそ志士の本色とも、真面目ともいうべきなれども
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)