紅霞こうか)” の例文
あるかぎり展開みひらかれた麥畑をの色にして、岡を越え、河に絶たれては打ちつづく桃の花の眺めは、紅霞こうかといふ文字はこれから出て、此野を吹く風が
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
朝日が日向灘ひゅうがなだからのぼってつの字崎の半面は紅霞こうかにつつまれた。茫々ぼうぼうたる海のはては遠く太平洋の水と連なりて水平線上は雲一つ見えない、また四国地しこくじが波の上にあざやかにえる。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
蟠桃河ばんとうがの水は紅くなった。両岸の桃園は紅霞こうかをひき、夜は眉のような月が香った。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸は紅霞こうかに埋ずもれてしまった。鐘は上野か浅草か。紅霞の中からボーンと響く。こんな形容は既に古い。「鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春」耽溺詩人其角きかくの句、まだこの方が精彩がある。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高氏は、ぼうと、おもてに紅霞こうかをただよわせて
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)