“精々(せっせ)” の例文
お稲ちゃんは、またそんなでいて、しくしく泣き暮らしてでも、お在(いで)だったかと思うと、そうじゃないの……精々(せっせ)裁縫(おしごと)をするんですって。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
或る時尋ねると、極(ごく)細(ほそ)い真書(しんか)きで精々(せっせ)と写し物をしているので、何を写しているかと訊くと、その頃地学雑誌に連掲中の「鉱物字彙(じい)」であった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
小さい台を真中に夫婦さし向いで、午前(ひるまえ)半日精々(せっせ)としあげておいて、午後(ひるから)二人でそれを売りに出る。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
私は精々(せっせ)と出入(ではい)りしました。先方(さき)からも毎日のように来るんです。そして兄さん、兄さんと、云ううちには、きっと袖を引くに極(きま)っているんです。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度印刷が出来て来た答礼の葉書の上書きを五人の店員が精々(せっせ)と書いていた。其間に広告屋が来る。呉服屋が来る。家具屋が来る。瓦斯会社が来る。交換局が来る。保険会社が来る。
「加減をして、うめて進ぜまする。その貴方様(あなたさま)、水をフト失念いたしましたから、精々(せっせ)と汲込んでおりまするが、何か、別して三右衛門(さんえむ)にお使でもござりますか、手前ではお間には合い兼ね……」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)