立込たてこ)” の例文
今まで野原同然に茫々ぼうぼうとしていた往来おうらいが、左右の店の立込たてこんで来ると共に狭くなる上に、鉄道馬車がその真中を駆けつつあるにもかかわらず
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
狭い土地に、数のない芸妓やによって、こうして会なんぞ立込たてこみますと、目星めぼしたちは、ちゃっとの間にみんな出払います。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう心付いて見れば一同の座敷も同じ事、先ほど誂えた初茸はつたけの吸物もまたは銚子ちょうしの代りさえ更に持って来ない始末である。別に大勢の客が一度に立込たてこんで手が足りぬというのでもないらしい。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おや。」「どうも、なんだつて大變たいへんひとで、とてもうちへははひれません。」「はてな、へい?……」いかに見舞客みまひきやく立込たてこんだつて、まはりまはつて、いへはひれないとはへんだ、とおもふと
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、うも、今日けふ閻王たいしやう役所やくしよしらべものが立込たてこんで、ひどよわつたよ。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)