窓掛カーテン)” の例文
灯を点けることも忘れ窓掛カーテンを引くことも忘れて、凝乎じっと私は椅子にもたれていたが、「旦那様、お食事のお仕度が整いましてございます」
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
その窓には非常に綿密なドローン・ウォークを施した、高価なものらしい白麻の窓掛カーテンが懸かって、一面にまぶしいハレーションを放射している。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
煖爐ストーブは冷くなつて居た。うそ寒い冬の黄昏が白い窓掛カーテンの外に迫つて居て、モウ薄暗くなりかけた室の中に、種々器械の金具が侘し氣に光つて居る。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
とにかく緑の窓掛カーテンだ。店の構えに心覚えはないのだから。そして窓に近い場所に、右か左か知らないが、とにかくひとつの街燈がなければならない筈だつた。
同じように硝子窓をいれた二階の窓は暗くてよくは分らないが、硝子越しに真紅まっか窓掛カーテンが見える。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
そして、それには通行者の証言があって、ちょうどその夜の十一時半に、わずかに隙いた窓掛カーテンの間から、被害者が十字を切っているのを目撃したと陳述する者が現われてきた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
床には歩いても音のせぬ厚い緑色の絨氈じゅうたんを敷きつめ、部屋全体の装飾が濃い黒っぽい緑色に統一されていて、北に向いた二つの窓の窓掛カーテンさえ同じ色なので、昼でも部屋の中が薄暗く
凍るアラベスク (新字新仮名) / 妹尾アキ夫(著)
入口は硝子戸が入つて、鉄格子に硝子障子、白のレースの窓掛カーテンも気がきいて居る。
カートンは一つの窓に凭れていた。窓掛カーテンは長くて白いのであったが、この一劃へも渦巻き込んで来た夕立風が、その窓掛カーテンを天井へ吹き上げて、それを妖怪の翼のようにはたはたと振り動かした。
応接室だろうか、日当りはいいが、窓掛カーテンも何もない、頗る殺風景な部屋で、粗末な卓子テーブルと椅子が二三脚あるばかりだ。その一つの椅子の上に天鵞絨ビロードのような毛をした黒猫が丸くなって眠っていた。
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
彼はルパンが急いで隠れた窓掛カーテンのひだの所を軽く叩きながら
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
直ぐ目の下の病院の窓が一つ、パッと火光あかりが射して、白い窓掛カーテンに女の影が映つた。其影が、右に動き、左に動き、手をあげたり、屈んだり、消えて又映る。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
緑色の窓掛カーテンを深々と垂らして、スタンドに灯でも入れて、さて椅子にどっしりと腰を埋めて、愛用のダンヒルから立ち昇る煙を楽しみながら、新刊の経済書でも手に取った時が
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
直ぐ目の下の病院の窓が一つ、パツと火光あかりが射して、白い窓掛カーテンに女の影が映つた。其影が、右に動き、左に動き、手をあげたり、屈んだり、消えて又映る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其男は、火光あかりした窓の前まで來ると、遽かに足を留めた。女の影がまた瞬時しばらく窓掛カーテンに映つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
うそ寒い冬の黄昏たそがれが白い窓掛カーテンの外に迫つて居て、モウ薄暗くなりかけた室の中に、種々いろいろな器械の金具が佗し気に光つて居る。人気なき広間に籠る薬のにほひに、梅野は先づ身慄ひを感じた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
少し行くと、右側のトある家の窓に火光あかりがさして居る。渠は其窓側まどぎはへ寄つて、コツコツと硝子を叩いた、白い窓掛カーテンに手の影が映つて半分許り曳かれると、窓の下の炬燵こたつに三十五六の蒼白い女が居る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)