空梅雨からつゆ)” の例文
びッくりさせる、不粋ぶすいなやつ、ギャーッという五さぎの声も時々、——妙に陰気いんきで、うすら寒い空梅雨からつゆの晩なのである。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その年の梅雨は空梅雨からつゆだつた。彼等、——年とつた癈人と童子とは、烈しい日光や草いきれにもめげず、池を掘つたり木を伐つたり、だんだん仕事を拡げて行つた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
空梅雨からつゆに代表的な天気で、今にも降り出しそうな空が不得要領に晴れ、太陽が照りつけるというよりはむしろ空気自身が白っぽく光り輝いているような天候であった。
ゴルフ随行記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その年は空梅雨からつゆであった。そうして六月の末から七月のはじめにかけて、真夏のように暑い日照りが続いていた。私はめっきり身体からだが衰えたような気がし、一人だけ先に、早目にO村に出かけた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
山椒の葉摘みつくしける庭に出て空梅雨からつゆのあけをしみじみ感ず
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「いいお日和ひよりがつづくじゃございませんか、こんなあんばいでは、今年は雨なしの空梅雨からつゆかも知れません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山椒の葉摘みつくしける庭に出て空梅雨からつゆのあけをしみじみ感ず
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
草堤空梅雨からつゆひさし子らと行き妻と行きつつせつなくおもほゆ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ことしは空梅雨からつゆか、ひと粒の雨も見えない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草堤空梅雨からつゆひさし子らと行き妻と行きつつせつなくおもほゆ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)