空井戸からいど)” の例文
「おッと、そいつは大安心おおあんしん、ここは空井戸からいどで一てきの水もないばかりか、横へぬけ道ができているからたしかに間道かんどうです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、ざぶざぶと水をわたって、空井戸からいどの下へ行ってみた。そして上へ向けて「おーイ、おーイ」とよんでみた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「分からねえとよ。中隊でも大騒ぎして、平服で出る、制服で出る、何でも空井戸からいどを探してるちゅうこンだ」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いえ本当でございますよ。あれは屹度きっと、あの空井戸からいどからでございますわ。あなたがお悪いんですわ。由緒ゆいしょある井戸をあんな風にお使いになったりして……」
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
城やとりでの間道かんどうとちがって、豪農ごうのうの家にある空井戸からいどの横穴は、戦時財宝のかくし場とするか、あるいは、家族の逃避所とする用意に過ぎないので、もとより
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂宋兵衛るそんべえや敵のおもなるものが、この口から逃走したとすれば、この空井戸からいどをふさいで、どこからかれらを追跡するか、どこへ兵を廻しておくか、まったくこれでは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、空井戸からいどの底には、横向きの穴があった。人間がやっとくぐってはいれるほどの穴だった。しかし、気味がわるくて、春木ははいる気がしなかった。彼は立上った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八木君は、空井戸からいどの中にひとりぽっちとなり、心細くなっていた。空井戸の底から上を見上げたとき、井戸の上あたりで、鬼火おにびが二つおどっているのを見て、びっくりした。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
法力競ほうりきくらべの説。及び、李逵りきを泣かす空井戸からいどの事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっきから、まっくらな、このしめっぽい空井戸からいどの底みたいな中で、きゃあきゃあいっていたのは、この女の子だったんだ。とたんに、大辻の頭の中に、一つの考えがぴーんとひらめいた。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)