稚内わっかない)” の例文
……おい、ひとつ、ここで復習サラって見せようか。……大正七年の六月に、北海道の北の端れで、稚内わっかない築港の名代の大難工事が始まった。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
朝八時に稚内わっかないを立って、夕方の四時に大泊おおどまり〔コルサコフ〕に着くまでの間、私は御免ごめんこうむって、ベッドの中にもぐり込んでいた。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
急いで郵便局の小窓の前に行って見たが、此処で放りこむよりも北海道の稚内わっかないへ帰航してからの方が余程速いということだった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
札幌から宗谷本線稚内わっかない行に乗って三時間、深川という駅で乗り換えて更に一時間半、留萌本線の終端駅と言えばすこぶる体裁よく聞えるが
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
今村博士の説によると、アイヌ語の「ナイ」は「平坦な土地」の義で、稚内わっかないはじめじめした平地、シャツナイは乾いた平地、幌内ほろないは広い平地の意味である。
地震なまず (新字新仮名) / 武者金吉(著)
稚内わっかないへ通ずる汽車の工事が始まるというので、第一回目の測量がすむと、もう停車場が此所へ建つの、あすこへ建つのという噂で、気の早い連中はもう自分だちの勝手ぎめで
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
が、稚内わっかないに近くなるに従って、雨が粒々になって来、広い海の面が旗でもなびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。——風がマストに当ると不吉に鳴った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
横浜から小樽、国境安別あんべつ真岡まおか本斗ほんと豊原とよはら大泊おおどまり敷香しくかと巡遊して、最後にその旅行の主要目的地であった海豹島かいひょうとうの壮観に驚き、更にオホーツク海を南下して北海道の稚内わっかないで一同と別れた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)