神楽堂かぐらどう)” の例文
それこそ、自分たちが、秩父の神楽堂かぐらどうの下から双子ふたごの高原まで追いつめて行って、遂に迫ることのできなかった日本左衛門ではないか。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母屋に近い藤棚のついた二間打ち抜きの部屋と一番はずれの神楽堂かぐらどうのような建て前の棟はもう借手がついていた。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今でも何か神社が残っているであろうが、かなり広い池をもったやしろ神楽堂かぐらどうが池の中にあった。
「何が大変なんだ、少し落着いて物を言え、お神楽堂かぐらどうから飛出した潮吹ひょっとこみたいな風じゃないか」
神社の境内に在るものでわたくしの興をひくのは絵馬堂えまどう神楽堂かぐらどうばかりである。絵馬堂は奉納の絵額と俳諧の献句が見られ、神楽の催しには仮面の可笑味がある故である。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東京を立ったのは昨夕ゆうべの九時頃で、夜通しむちゃくちゃに北の方へ歩いて来たら草臥くたびれて眠くなった。泊る宿もなし金もないから暗闇くらやみ神楽堂かぐらどうあがってちょっと寝た。何でも八幡様らしい。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
神楽堂かぐらどうへ出て来るような、はかまの少女が四人、灯明と供物くもつを持って入って来ました。