祗候しこう)” の例文
景陽宮の深殿しんでんは、ここかがや祗候しこうだった。出御しゅつぎょ金鈴きんれいがつたわると、ほどなく声蹕せいひつむちを告げること三たび、珠簾しゅれんサラサラと捲き上がって
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神※の※の字は音「ぎ」にして示扁しめすへんに氏の字を書く。普通に(氏の下に一を引く者)の字を書くは誤なり。祗は音「し」にして祗候しこうなどの祗なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
官符をかしこみ、忩然しようぜんとして道に上り、祗候しこうするの間、仰せ奉りて云はく、将門之事、既に恩沢にうるほひぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
分けても娘が関白の御前へ祗候しこうするために常よりは濃い化粧をして身じまいをとゝのえる時、母親が示す細やかな注意と、行き届いた親切とには、ほと/\感激したのであった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
山田博士は、「雪にうくづきまゐり来らくも」と訓み、「古は初雪の見参といふ事ありて、初雪に限らず、大雪には早朝におくれず祗候しこうすべき儀ありしなり」(講義)と云っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
蒼惶そうこうと、彼が参内するとまもなく、景陽楼の鐘が鳴り、祗候しこうには、ぞくぞくと、文武の群臣があつまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また都に祗候しこうの主筋や縁故えんこを持つやからは、これまたぞくぞく、東国から京へと急ぎ、海道はそのため、西ゆく者、東する者、くしの歯をくが如しじゃと、いわれておる
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、北朝祗候しこうの公卿たちの狼狽は目もあてられない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)