砂烟すなけむり)” の例文
南条駅を過ぎる頃から、畑にも山にも寒そうな日の影すらも消えてしまって、ところどころにかの砂烟すなけむりが巻きあがっている。
春の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雪にも月にも何の風情ふぜいを増しはせぬ。風が吹けば砂烟すなけむりに行手は見えず、雨が降れば泥濘でいねい人のきびすを没せんばかりとなる。
「おや、またじきあすこに砂烟すなけむりが見えます。これはたいへんだ。」とあわてました。すると、ぶくぶくが
ぶくぶく長々火の目小僧 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
振返って見ると、砂烟すなけむりを立てて一頭の駄馬が人を乗せて驀然まっしぐらに走って来ます。お君は驚いてその馬を道傍みちばたに避けると、馬は人を乗せた上に、また一人の旅人がその轡面くつわづらを取って駆けて来るのです。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
溝際に突放して、それというまま砂烟すなけむりを揚げぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喇叭ラッパの響のみならず、昼のうちは馬場の砂烟すなけむりが折々風の吹きぐあいで灰のように飛んで来て畳の上のみならずふすまをしめた押入おしいれの内までじゃりじゃりさせる事がある。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今はセメントで固めた広い道路となってトラックが砂烟すなけむりを立てて走っている。
水のながれ (新字新仮名) / 永井荷風(著)