短衣チョッキ)” の例文
彼は、刑事がするがままに、外套と上着と短衣チョッキ洋袴ズボンとの衣嚢をのこらず裏返して紙屑一つあまさず所持品という所持品を悉く没収された。
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
彼女は、その火の玉のような断髪を彼の短衣チョッキの胸へ預けて、片っぽうの眼で笑い、もう一つの眼で泣きながら、スケイトのJAZZを継続した。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
しんがしゃんとしていて、ときどき思い出したように、そっと片手をテーブルの下へって短衣チョッキの上から腹部のあたりを押してみたり、でてみたりしている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
その夜の旗太郎は、平常ふだんなら身ごなしに浮き身をやつす彼には珍しく、天鵞絨びろうど短衣チョッキのみを着ていて、絶えず伏眼になったまま、その薄気味悪いほどの光のある、白い手をもてあそんでいた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
薄暗うすくらがりを、矢のように、上衣うわぎなしの短衣チョッキずぼん、ちょうど休憩をしていたと見える宿直の医師ドクトルがね、大方呼びに行ったものでしょう、看護婦が附添って、廊下を駆けつけて来たのに目礼をして
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お茶の舞踏には、火の玉みたいな彼女の断髪が、彼の短衣チョッキの胸にへばり附いて、仲よくチャアルストンした。彼はその、上から二つ目の扣鈕ボタンの横に残った白粉おしろいのあとを、長いこと消さずにいた。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
中世紀の小姓みたいな総金もうるの短衣チョッキ