みまも)” の例文
「一ツかね。」とケロリとした顏で、學士の顏をみまもりながら、「大きいのが可いかね、それとも小さいのになさるだかね。」
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
雨の降る日は老爺は盡日ひねもす圍爐裏に焚火をして、じつと其火をみまもつて暮す。お雪は其傍で穩しく遊んで暮す。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お妙は気をはりつめんと勤むるごとく、じっみまもる地図を的に、目をみはって、先刻さっきからどんなにこらえたろう。忍ばず涙ぐむと、もうはらはらと露になって、紫の包にこぼれた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
畫題ぐわだいは『自然しぜんこゝろ』と謂ツて、ちらしがみ素裸すつぱだかわかをんなが、新緑しんりよく雑木林ざふきばやしかこはれたいづみかたはらに立ツて、自分のかげ水面すゐめんに映ツてゐるのをみまもツてゐるところだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それでも流石に泣聲を怺へて、眤と老爺の顏をみまもつてゐた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)