真身しんみ)” の例文
旧字:眞身
だから倉地さんに意向を伺おうとすれば、倉地さんは頭から僕をばかにして話を真身しんみに受けてはくださらないんです
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼女は間もなく重患でどっと床就とこづいたが、誰一人真身しんみに介抱をしてくれる者もなく、あわれ寂しく死んで行った。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
花「またそんな事を云って、私に心配させて笑っているのかい、何うしてお前さんは情がないのだろう、私が真身しんみになって相談すれば茶かして仕舞って」
何処どこからかかうお前のやうな人が己れの真身しんみあねさんだとか言つて出て来たらどんなにうれしいか、首つ玉へかぢり付いて己れはそれぎり徃生わうじようしても喜ぶのだが
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
娘は真身しんみに嬉しさを感ずるらしく、ちょっと籐椅子を私の方へいざり寄せ、ひじで軽く私のわきの下をいた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
自分の名を耳にしてはいりかねていたお艶が栄三郎の真身しんみに感きわまったものか、花びらのように転びこんで、白い腕が栄三郎の首にすがったかと思うと、ことばもなく顔を男の胸にうずめて……
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……暮らし向きが張り過ぎるなら張り過ぎると……なぜ相談に乗らせてはくださらないの……やはりあなたはわたしを真身しんみには思っていらっしゃらないのね……
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それにふみの模様では小主水花魁が相変らず親切に真身しんみになって世話をしておくんなさるてえから、大丈夫だ心配することはないが、何うも気になってたまらんよ
これほどまでに倉地は真身しんみになってくれていたのか。葉子は辞令をひざの上に置いたまま下を向いて黙ってしまった。目がしらの所が非常に熱い感じを得たと思った、鼻の奥が暖かくふさがって来た。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)