真宗しんしゅう)” の例文
多いものは小間物屋、可なり大きな真宗しんしゅうの寺、天理教会、清素せいそな耶蘇教会堂も見えた。店頭みせさきで見つけた真桑瓜まくわうりを買うて、天塩川に往って見る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
頭の黒い真宗しんしゅう坊さんが自分の枕元に来て、君の文章を見ると君は病気のために時々大問題に到著とうちゃくして居る事があるといふた。それは意外であつた。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
宗教の盛んな土地で、真宗しんしゅうの家系と禅宗の家系とは、歴史的に根深い反目と敵意とが続いていた。
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私はこのKと小供こどもの時からの仲好なかよしでした。小供の時からといえば断らないでも解っているでしょう、二人には同郷の縁故があったのです。Kは真宗しんしゅうの坊さんの子でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
切支丹どころか真宗しんしゅうのこちこちなんだのに、只あの変な観音様を内証ないしょに所持しているというだけで、やみくも因縁つけようというんだから、今となっちゃあっしまでも野郎達四人が憎くなるんです。
私はまだつまびらかにはしませんが、九州は真宗しんしゅうの信心の盛んな所ですから、あるいはこの村にも、この庶民の仏教が活きていて、醇朴じゅんぼくな信仰生活が、村人の間に行われているのかとも想像されるくらいです。
多々良の雑器 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
○泥棒が阿弥陀様あみださまを念ずれば阿弥陀様は摂取不捨せっしゅふしゃちかいによつて往生させて下さる事うたがいなしといふ。これ真宗しんしゅうの論なり。この間に善悪を論ぜざる処宗教上の大度量を見る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
精神的になって来ると——そうですね、古臭ふるくさい例を引くようでありますが、坊さんというものは肉食妻帯にくじきさいたいをしない主義であります。それを真宗しんしゅうの方では、ずっと昔から肉を食った、女房を持っている。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宋儒そうじゅの如き心を明かにするとか、身を修めるとかいふやうな工夫も全くこれを否認しただ聖人の道を行へばそれで善いといふ処はよほど豁達かったつな大見識で、丁度真宗しんしゅう阿弥陀様あみださまを絶対と立てて
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)