まみえ)” の例文
「よくああ無造作むぞうさに鑿を使って、思うようなまみえや鼻ができるものだな」と自分はあんまり感心したから独言ひとりごとのように言った。するとさっきの若い男が
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
心配しないで楽に居て、御覧々々と重ねて云うと、芝居で泣いたなりのしっとりしたまみえを、嬉しそうに莞爾にっこりして、向うを向いたが、ちょっと白い指でおさえながら、その花簪はなかんざしを抜いたはどうだい。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分はこの窓口へ行って、自分の姓名を書いた紙片かみきれを出すと、窓の中に腰を掛けていた二十二三の若い男が、その紙片を受取って、ありもしないまみえへ八の字を寄せて、むずかしそうにとくとながめた上
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
横顔がほんのりと、濡れたような目に、柔かなまみえが見えて
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)