相聞そうもん)” の例文
堕ちたるものの呻きが、はじめて邂逅かいこうをよび、感謝と帰依に一切を見出みいだすのは当然ではなかろうか。親鸞の和讃のごとき一種の相聞そうもんと云ってよい。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
まだ月も出ず暗いので、能登の海に釣している海人あま漁火いさりびの光を頼りにして歩いて行く、月の出を待ちながら、というので、やはり相聞そうもんの気持の歌であろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そしてどういうまぐれか、ここでもつたない歌のぬかれることが多く、思いがけぬ方から相聞そうもんを頂いたりするにつれて、ひとかどの歌人にも成りかねない気持になっていった。
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
相聞そうもんの歌では、これがいちばん男性的であるというような意味で、良斎先生の愛誦あいしょうとなっているところから、その口うつしが、思わず知らず、お雪ちゃんの口癖になっているのかも知れない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……万葉、巻十三、相聞そうもんの反歌だ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「ものうちかたれわがせわぎもこ」の句に、私はその一切を偲ぶのである。たとえば万葉集巻八には、皇后が、聖武天皇にささげた次のような相聞そうもんがのっている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
天智天皇、蒲生野がもうのに遊猟し給える時、額田王ぬかたのおおきみの歌った、「あかねさす紫野行き標野しめの行き野守は見ずや君が袖振る」という歌に対し、東宮の大海人皇子の答えた有名な相聞そうもんがある。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)