皮切かわきり)” の例文
彼はまず一週間ほど前耳にした彼女が近いうちに結婚するといううわさ皮切かわきりに須永をおそった。その時須永は少しも昂奮こうふんした様子を見せなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だからそのスローガンの実行の皮切かわきりに、吾輩アンポンタン・ポカンはこの通り、自分自身の『物を考える脳髄』を地上にタタキ付けて見せたのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それが皮切かわきりで、それから三日目、四日目、時としては続いて毎日来た。来れば必ず朝から晩まで話し込んでいた。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかし若林博士の手腕が、如何に卓抜恐るべきものがあるかという事は、まだまだこれから追々おいおいとお解りになりますので、今迄のところはホンの皮切かわきりに過ぎないので御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
会話の皮切かわきりに清子の夫を問題にする事の可否は、利害関係から見ても、今日こんにちまで自分ら二人の間に起った感情の行掛ゆきがかじょうから考えても、またそれらの纏綿てんめんした情実をかたわらに置いた
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃ、代さん、皮切かわきりに何か御遣おやり」と今度は代助に云った。代助は人に聞かせる程の上手でないのを自覚していた。けれども、そんな弁解をすると、問答が理窟りくつ臭く、しつこくなるばかりだから
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)