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白萩
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しらはぎ
「さて誰袖の
折檻も今日はこのくらいにして置いて、次の
処刑に移ろうかい。やいやい加藤次、
白萩めをもっと縁近く曳いて参れ!」
纔かに
築山の蔭に貧弱な
芙蓉が咲いているのと、シュトルツ邸の境界寄りに、
一叢の
白萩がしなだれている外には、今は格別人眼を
惹くような色どりもない。
桔梗や
紫苑の紫はなお
鮮かなのに、早くも盛りを
過した
白萩は泣き伏す女の乱れた髪のように四阿屋の
敷瓦の上に流るる如く倒れている。生き残った虫の
鳴音が露深いその
蔭に糸よりも細く聞えます。