痩男やせおとこ)” の例文
こう云っている男は近眼目がねを掛けた痩男やせおとこで、柄にない大きな声を出すのである。そばから遠慮げにくちばしを容れた男がある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
明らかに中傷の目的で言ったには違いないが、冗談も良い加減にするがいい。このサルタンは精力絶倫どころか、辛うじて生きながらえている痩男やせおとこだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これわれがな、わたくし一人の仕事でございますなどとしらを切っても、うむそうかと云って済ますような盲目めくらじゃアえ、よく考えて見ろよ、手前てめえのような痩男やせおとこ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一首の意は、寺々に居る女の餓鬼どもは大神おおみわ男餓鬼おとこがきを頂戴してその子を生みたいと申しておりますよ、というので、大神奥守は痩男やせおとこだったのでこの諧謔かいぎゃくが出たのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
僕もよろめきながら見て歩いた。今にもぶっ倒れそうな痩男やせおとこがひらひらと紙幣を屋台に差出し、手でつかんだものをもう口に入れていた。めらめらとゆらぐ焔はいたところにあった。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)