畜生道ちくしょうどう)” の例文
我れとわが身をかきむしるのはこの世ながらの畜生道ちくしょうどうだ。柔和忍辱にゅうわにんにくの相が自然に備わるべき仏の子が、まるで狂乱の形じゃ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「この男の父母ちちははは、畜生道ちくしょうどうに落ちている筈だから、早速ここへ引き立てて来い」と、一匹の鬼に言いつけました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたかも何よ、それ畜生道ちくしょうどうの地獄の絵を、月夜に映したような怪しの姿が板戸一枚、魑魅魍魎ちみもうりょうというのであろうか、ざわざわと木の葉がそよ気色けしきだった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もしある期間を過ぎても、両人の醜行改まる模様なき時は、本紙は容赦なく詳細の記事を掲げて畜生道ちくしょうどうに陥りたる二人ふたりを懲戒し、あわせて汽船会社の責任を問う事とすべし。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
口惜しいよりは畜生道ちくしょうどうの夫の心が浅間あさましく、もしこの様な人形がなかったなら、こんなことにもなるまいと、はては立木という人形師さえうらめしく思われるのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まことにこの世ながらの畜生道ちくしょうどう阿鼻あび大城とはこの事でございましょう。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
それは二段抜の初号標題みだし畜生道ちくしょうどうにおちた兄妹きょうだいとしたものであった。神中の頭はわくわくとした。神中はくいつくようにしてその記事に眼をやった。それは己等じぶんら兄妹きょうだいを傷つけた憎むべき記事であった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まことにこの世ながらの畜生道ちくしょうどう阿鼻あび大城とはこの事でございませう。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)