留別りゅうべつ)” の例文
そのうちに、父は県知事に昇って移転することになったので、内外の親戚らを招いて留別りゅうべつの宴を開いた。その宴席で父は言った。
これは漱石氏が留別りゅうべつの意味でしてくれた御馳走であった。その帰り道私は氏の誘うがままに連立ってその仮寓に行った。そうして謡を謡った。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いや解らない。軽蔑けいべつの結果はあるいは解ってるかも知れないが、軽蔑の意味は君にも君の細君にもまだ通じていないよ。だから君の今夕こんゆうの好意に対して、僕はまた留別りゅうべつのために、それを
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
江戸の家人に留別りゅうべつする絶句に、「此行不為鱸魚膾。擬把新詩補白華。」〔此ノ行鱸魚ノ膾ノためナラズ/新詩ヲリテ白華ヲ補ハンコトヲ擬ス〕と言ってあるから時節は秋の半過なかばすぎであろうか。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところが近来は俳句仲間にもその弊風へいふうが盛んになつて送別ぢやの留別りゅうべつぢやの子が出来たの寿賀じゅがをするのと、その時々につけて交際のある限りはその句を請求する、それが何のためかと思ふと
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
蒲団ふとん荷造りそばに留別りゅうべつ句会かな
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)